発達障害児の暴言について思うこと 〜無視は問題行動消去の手段〜
親友の息子のRくんと親友宅で遊びました。Rくんは現在小学生1年生で、ADHD+ASD(自閉症スペクトラム)の診断がついています。
知能面としては、小学2年生レベルの内容も理解できるのですが、こだわりが強く団体行動ができないため支援級にかよっています。
彼が幼稚園の年少のときに、園長先生から発達検査を薦められて、すぐに診断がつきました。
親友は、発達障害の受容には時間がかかりましたが、現在は受け入れてRくんのために一所懸命関わっています。
私にとって親友の存在があったからこそ、発達障害に対する基礎知識を得ることができ、私の息子の発達障害の受容が早い段階でできました。また、悩んだ時に親友に相談していて、大変助けられています。
さて、Rくんと息子は仲良く遊んでいたのですが、Rくんのお気に入りのおもちゃを息子がとってしまったときにちょっとした問題がおきました。
Rくんがおもちゃを渡したくなかったのですが、母に「貸してあげなさい」と言われておもちゃを取り上げられたのが面白くなかったようです。
Rくんは、窓ガラスをたたいたり、頭をぶつけたりして、感情を爆発させてしまいました。
そして、
「イライライラ。怒っちゃう。堪忍袋の尾がきれそう。恨んでやる。(もっとヒドイ言葉が続きました…)」
など暴言を言い始めたのです。
しまいには、
「2階にいって、窓から飛び降りて死んでやる」
とまで言い始めました。
Rくんが2階にむかったので、私はハラハラしてしまいましたが、親友は
「気を引きたいだけだから。すぐに戻ってくるよ」
とのこと。
そして、しばらくして、何事もなかったように戻ってきたので、ホッとしました。
暴言などの問題行動は、注目をひきたい場面で発生しやすいです(原因は様々なので、その時々で分析する必要があります)。ABA(応用行動分析学)では、メリットを与えないことで問題行動を消そうと試みます。
今回のメリットは「注目」なので、メリットを与えないためには、注目しないことつまり無視することで、消去を試みています。
そして、今回の件を深掘りしてみると、彼はきっと暴言をはくことで注目を得た経験があったのだろうなと思います。
窓ガラスをたたけば、誰かが寄ってきて、要求に応えてくれたり、注目をくれたことがあったのではないでしょうか。
暴言をはけば、誰かが注意するという「注目」であったり、「2階にいき飛び降りる」という行動をとめにくる「注目」を得たのだろうと思います。
最初はささいな暴言の内容が、エスカレートしていき、今回の穏やかでない内容に発展しているのかもしれません。
振り返ってみれば、彼自身、感情をコントロールすることや、他人に合わせるといった苦手なことを叱責されつづけてきたようで、「生まれてこなければよかった」と母親である親友に吐露したことがあるそうです。
また知能は高いので、周りの言っている内容は理解できます。そのため、自己肯定感が低くなり、暴言の内容もどんどん難しい内容で効果的な言葉を覚えていっています。
今のRくんの心理面は深くこじれている状況で、2次障害に発展しているかもしれません。
推測にすぎませんが、早期発見や早期療育ができていたら、こじれずにすんだかもしれないなと感じています。
うまれつき自分が出来ないこと苦手なことで、強い叱責を受け続けたら、誰だって生きているのが辛くなるのではないでしょうか。
先天的にもっている生きにくい特性を、社会でいきやすいように変えていくのが療育だと感じていたのですが、2次障害にならないように関わり方を工夫していくことの効果の方が何よりも大事なんだと思いました。
早期発見して、早期受け入れをして、その上で早期療育をすることが必要なのだということを、改めて強く感じた出来事でした。
Rくんのように「生まれてこなければよかった」という感情を抱く子どもが少しでも減るように、早期療育の大事さを強く伝えられたらなと心を新たに決心しました。
また、発達障害を抱えている子が問題行動をしているときに親が我関せずといったふうにみえても、それは問題行動を減らすための消去の手段です。周りの目を気にして、注意したりすると、またこの問題行動が強化されてしまいます。
このことが周知される世の中になることを願ってやみません。
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