物の扱いが雑な息子。性格ではなく性質だった。〜固有覚の鈍さという特性をしる〜
先日、反省する出来事がありました。
息子のりくですが、物を持ったり、置いたりする動作が雑です。
たとえば、
牛乳が入ったコップを置こうとしたときに、雑に置いてコップが傾き牛乳がこぼれる
おもちゃの入った箱を運んでおく際に、投げて置く
などです。
液体がこぼれると拭かなくてはなりませんから、つい少し声を荒げて
「コップをおくときは、そっとだよ!」と言っていました。
おもちゃの箱を投げ置いたときには、
「丁寧に置かないと、箱やおもちゃが壊れて遊べなくなっちゃうよ」
と説明していました。
りくは、こぼしたり、投げたりすることはいけないことだと理解しているので、それらの行動をしてしまったあとは、ハッとして「やっちゃった……」とばかりに肩をすくめ悲しそうな顔をします。
家では基本は怒らないようにしているのですが、保育園は厳しく叱られることもあるようです。
なんとなく、
「幼いころからモノを雑に扱っても見逃してきたから、それが習慣化=誤学習しちゃったのかも」
と感じたので、雑な行動に気がついたときには、そういう動作はしてはいけないのだと何度も言ってきました。
現在、二ヶ月に1回ほど、療育センターに母子で通い、臨床心理士の先生にみてもらう時間をとっています。
同室でりくはおもちゃで遊び、私は心理士の先生に発達に関する悩みを相談する時間として、過ごしています。
それで、先日その時間があったのですが、
遊んでいたりくのおもちゃの扱いが雑な姿をみて、心理の先生が
「りくくんは、モノの扱いが丁寧にできない傾向がありますね」
と言いました。
私は「雑に扱ってもいいと誤学習したのでしょうか?」
と日頃思っていたことをぶつけてみると
「いえ、りくくんは、力をコントロールする能力の発達がゆっくりなのかもしれません」
と言われました。
私はある出来事を思い出しました。それは、りくが転びやすいので半年前に作業療法士の方に診てもらってときのことです。
「りくくんは、『固有覚』が入りにくいようです。それで、突発的に体の動きをうまくコントロールできず、転んでしまっていると考えられます」
とおっしゃったのです。
私はこの話を心理士さんにしたところ、先生は「やはり、そういう指摘があったのですね」と納得されている様子。
へぇぇぇぇ、、、、
『雑な動き』が、しつけのせいではないし、りくの生まれつきの感覚からくるものだったなんて。
今まで、りくに「モノを大事にもとうね」「ざつに扱わないようにしよう!」などの声掛けをしてきましたが、りくにとっては感じ取れない感覚を要求するものだったのだと愕然としました。
長い間、りくは、自分では意識してもできないことを要求され続けてきて困っていたのだと思うと、胸がすくむ思いがしました。
以前、感覚統合を専門にしている教授の講演会で聞いた話が頭をかすめました。
「感覚にかかわる問題は本人自身が困っていても、周りには影響が少ないため表面化しにくいです。
でも、本人にとっては24時間付き合う身体なので、いたるところで困ったり苦しんだりしています。
できるだけ、家族の方や周囲の人が注目して手助けしてあげてほしいです」
あぁ、少しでもはやく気がついてあげられれば。
半年前くらいに、作業療法士さんにりくの固有覚が鈍さを教えてもらっていたのに……。
固有覚が鈍いと伝えられたときは、固有覚の言葉の意味をおぼろげに理解はしましたが、頭にきちんとはいっておらず、転ぶ=平衡感覚の鈍さからだと思いこんでしまっていました。
ここで、一旦、「固有覚」を整理しておきますね。
固有覚(固有感覚)というのは、筋肉や関節にある感覚のセンサー。
”固有感覚は、筋肉の張り具合や関節の曲げ伸ばしを感じ取る感覚です。
自分の身体の位置や動きを把握し、身体を動かすことができます。”
『発達が気になる子の学校・家庭で楽しくできる感覚統合あそび』より
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たとえば、コップを持っているときに、どのくらいの強さで持ち続けていればいいのかを、固有感覚で感じ取って力をコントロールしたり、目をつぶってグーチョキパーができるのも、関節の動きを固有感覚でイメージできるからなのだそうです。
固有覚のつまづきは、雑な動きだけでなくいろんなところで困りごとがでてきます。
りくのように、よく転ぶ、動きの模倣などのダンスが苦手、姿勢が悪くなりやすい、コツコツと机を叩いて音をだすなどです。
他の子に乱暴な動作をしてしまうケースも、感情を抑えにくい衝動と、固有覚の鈍さから動きが乱暴になるようです。
さて、気になる、固有覚の鈍さを解消する方法です。
転びやすさを相談したときに作業療法士の方に言われたのは、遊具などで、はしごなど、自分の視界に入らないでする足の動きをどんどん取り入れてみることを言われました。
固有覚の鈍さからくる症状もさまざまなので、それが解消しそうなあそびはさまざまなようです。
専門書には、固有覚や触覚、平衡感覚などに合わせて、苦手な分野を解消するあそびが書いてあるので、それを参考にしてみるのもいいかもしれません。
現在りくは、ほとんど転ばなくなりました。やったことは、平日夕方に近所の公園にいったり、休日は大型遊具のある公園にいき、とにかく楽しく身体を動かすことや、はしごなど苦手な遊具も「楽しいよ〜」と盛り上げながら一緒に挑戦しました。
モノを雑に扱ってしまうのは、手の固有覚の問題なので、雑巾がけや折り紙、工作など、手を使う遊びや動きを意識して普段の生活に取り入れてみようと思います。
とにかく楽しく手足を動かして遊ぶことが、早い近道かもしれませんね。
本人が「生まれつきできないことや、苦手なこと」を、叱らないようにしたいと思っていました。
でも、特性をわかっていなかったことにより、りくを追い詰める声掛けをしてしまいました。
またひとつ、りくの特性がわかってよかったです。